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エッセイコンテスト2012

エッセイコンテスト2013 最優秀作品「ひとり、島時間」深井 奈緒子

所用で私だけ沖縄に行くことになったとき、「せっかくだから島にもいっておいでよ」と強 く勧めてくれたのは夫。沖縄本島には何度か家族で行ったことがあったが、移動時間や費用などを考えると、憧れの八重山諸島にはなかなか行けない。 沖縄一人旅は少々日程を延ばして、石垣島、竹富島にも行けることになった。

石垣島から、いよいよ竹富島に行く日。時計はホテルに置いていくことにした。時間を忘れ て、ゆっくり過ごそう。車を離島桟橋 の駐車場に止め、チケットを買う。割と新しく明るい離島桟橋は、旅立ちの高揚感であふれていた。ここから、竹富島を始め、黒島、波照間島、西表 島、いろんな島に船で 渡ることができる。所要時間を見比べながら、まだ見たことのない島々の風景を想像する。
やがて時間がきて、ざわざわしていた人たちが、次々に船に乗り込んでいく。いよいよ竹富島に出発だ。夏の海は穏やかで、白い波がキラキラ光る。船 は飛ぶように走り、あっという間に小さな島に到着する。はじめまして、竹富島。今日1日のこと全部、忘れないように、心に刻むつもりです。


1周9キロのほぼ真ん丸な島、竹富島は、信号がなく、牛の数とレンタサイクルの数が人より車より多いそう。私もさっそく自転車を借りた。
島の道路にはサンゴの砂が敷いてあり、少し走りにくいのだけど、白い道は島を清潔な印象にしてくれている。白い眩しさに思わず目を細める。


走り出してすぐ、花に彩られたかわいい小学校、中学校が見えてきた。日本のはじっこのほうで、うちの子と同じように子どもたちが、勉強したり運動 したりしている。こんなにかわいい島に生まれて育つこと、君たちの目にこの島の風景や、テレビでみる東京や、島にやってくる大勢の観光客はどんな ふうに映るのかな。想像して楽しくなった。


まあるい島の中心部には自転車に乗った人々がすれ違う。おそらく、泊まらずに数時間で観光する人たちだ。「なごみの塔ってどっちですか?」私も声 をかけられた。「あっ、あれですね。行ってみましょうか」「けっこう急な階段ですよね」「なごめない・・・」気軽に言葉をかわす。普段、知らない 人とは目も合わさない人たちも、自然に笑顔になる。青い空、のんびりした空気、会話が進む空気ってあるのかもしれない。なごみの塔からは、竹富島 を紹介する写真でよく見かける、赤瓦の屋根の街並みが見えた。絵葉書じゃない。自分の目で見ていると思うと興奮する。



ふと、屋根の上のシーサーが目に入る。台風の雨、風にさらされて、ゴツゴツしてるうえ、怖い顔をしているけど、うわ、かわいい、一瞬にして私は シーサーが 好きになり、ここから目についたシーサーはみんなカメラに収めることになる。シーサーはあちこちにあり、どれも違った表情で、笑ったり、脅かした りしてい る。シーサー発見の旅、これが竹富島で始めに気付いた、竹富時間の過ごし方だ。

そのうちどこからか、三線の音が聞こえてきた。かき氷を売っているパーラーだ。入ってみると男女6人くらいのグループが 三線を弾きながら談笑していた。こ んにちはー、とごくごく自然に仲間に入る。私は東京にいても社交的な性格なので、なんの勇気もいらない。三線も、すごく上手ってほどじゃないけど 弾けるの で、すぐに意気投合。やっぱりこの島には、人と人が気軽に会話できる空気があるのだ。
知っている曲を一緒に何曲か弾いて、歌った。三線の音を聴くと、ここが沖縄だと時間が湧いてくる。若い人からお年寄りまで親しまれている三線 は、 つらい時代を支えて来たり、祝い事を盛り上げたり、沖縄と切っても切れないものなのだ。
やがて運ばれてきたかき氷を、そこにいる人で交換しながら楽しく食べた。さっき出会ったばかりなのに、お互いに食べ物を交換しているなんて。 やが てその人 たちは船の時間を気にして帰っていった。お互い名前も知らない。どこから来て、どこへ行くのか。人と人はネームプレートをつけていなくても、笑い あえるの だ。


島の外周路にも出てみた。島の中心部の、お店が集まっているあたりから離れ、海を見に行くつもりだった。昼近い太陽はさらにカンカンと照りつ けて きた。
ここで、冷やっとする出来事があった。長いスカートのすそが自転車に絡まってしまい、自転車が急に動かなくなってしまったのだ。周りを見渡し ても 誰もいな い。自転車が使えないようになったら、人のいるところまで1歩ずつ、自分の足で歩かなければいけない。大したことない距離とはいえこの暑さだ。暑 いのに、冷や汗が出た。ペットボトルの水は、すぐになくなるだろう。熱中症、そんな言葉が頭をよぎる。海でだって、道路でだって、大自然をな めて いると痛い目にあ う。ひとりは自由だけど、責任も自分にある。真夏の太陽の下で、人間は小さく無力だ。
そうっと、でも思い切って引っ張ってみる。繊維の裂ける音がした。うわわ、どこが切れたんだろう。恐る恐る広げると、幸い目立たないところが 切れ ていた。 ほっとして、また走り始める。こうしている間、夏の道路はカラカラに乾き、誰も通らない。あの船にいっぱい、運ばれてきた人たちはどこへ消えてし まったのか。あのとき、夏の乾いた道路で、私はひとりで、自分の小ささとか、生きていく力とか、いつも私を助けてくれる人のこととか、いろん なこ とをいっぺんに考 えていた。


西桟橋に行くと、人がいた。あの人たちもみんな、誰かとつながっている。そんなことを思う。
砂が白い。緑の部分と、青い部分がはっきり分かれた海は眩しいほど。穏やかな海は波もなく、風景から旅人を差し引いてみたら、時間が止まって いる ように見 えた。スカート巻き込み事件の時も思ったけど、ここは時間の流れ方がゆっくりみたい。いつも考えないようなことが、頭に浮かんでくる。
海岸から少し下がったところに持参したパレオを敷いて座った。しばらくそこで、海を見ていた。入れ替わり立ち替わり、人々がやってきて、ひと しき り写真を 撮って、桟橋の先まで行って帰ってきて、そして去ってゆく。やがて静寂が訪れる。旅人にとっては特別な、人生のうちの1日。この海は悠久の時の流 れの中 で、淡々と毎日を繰り返している。私は明日ここにいない。それがなんだかひどく寂しいことのように感じた。静かな海をずっと見ていたかったけど、 パレオの 砂を払って畳み、自転車で走りだす。


名前のついているビーチをいくつか回って、自分のためにブレスレットをひとつ買って、沖縄そばも食べて、それでもまだ日は傾かない。
沖縄の夏の日は長い。わかっていたけど、ふと確かめた時間に驚く。そろそろ帰りの船の時間だ。

島には、大きなレジャー施設はないし、マリンスポーツするところもなかったように思う。それでも、どこまでも青く美しい海と、天使の絵筆が雲 を描 く、空があった。地元の人が守ってくれている、美しい街並みがあった。

島ではあまり計画を詰め込まずに、気ままにゆっくり、見て回ったらいいと思う。

さようなら、小さなかわいい竹富島。船が小さな港を離れるとき、今日あちこちで見かけた小さな御獄に祈る。「またいつか、ここに来られますよ う に」。
心の中に、また帰ってきたい沖縄の海があるのは、旅がくれた何よりの贅沢かもしれない。

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