住宅街にポツリと灯るネオンがひとつ。
タクシーを降りると、ほとんどの人は呆然と立ち尽くし、しばらく放心状態を経験したあと、自身を納得させるかのように首を縦に振りながら歩き始める。そして、心の中の葛藤に打ち勝ち、覚悟を決めて扉を開くのだ。
扉を開けると そこは・・・・
カウンターの客人が『ん?』っと振り向く。たーやがやー?! 好奇心と意外性の眼差しで見つめる視線が突き刺さる。ここでくじけてはいけない。座らなくては何も始まらないのだから。
沖縄なのに、なぜ『信濃路?』と思ってマスターに聞いてみた。信じたことをこだわり続けながらまっすぐ進んでいく路という思いを込めてつけたそうだ。
創業当初はウイスキーが天下をとっていた時代。当時飲食店のオーナーたちは口をそろえて言っていたそうだ。「泡盛売ったら儲からんどー」と。にもかかわらず、うちなーだからと泡盛でいいんだと泡盛だけを売った。これもマスターのこだわり。
付近の住人が仕事帰りにふら〜っと立ち寄ったり、むえー『模合(もあい):たのもし』があったり。着飾ったおばちゃまが突然「てびち」を食べに来たり。地域の住民と、マスターの仕事(琉球古典音楽)仲間が集う店。本土で古典を習っている方だとびっくりするようなお人が、さりげなくカウンター席にいてみんなと一緒に楽しく笑っていたり。
一言語らえば、老若男女みな友達。まさに 「いちゃりばちょーでー」 なお店なのだ。
この店はおでん居酒屋。創業以来、おでんの汁を毎日毎日あちらしけーさー(温めなおし)している。台風でお店が休みになっても、おかみさんは必ず火を通しにやってくる。この汁との絶妙なコンビネーション、とろける美味しさの『てびち』は、まさにぬちぐすい。ほんと、これだけ食べに立ち寄る人もいるそう。
そうそう、このお店のカウンター席の椅子は、リクライニング機能付の車のシートなのです。ついつい長居をしてしまう心地よさ。ぜひ一度カウンター席へどうぞ。
(2015.06.01更新)
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