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池田 卓 船浮通信

サンゴ

 

北風が多くなり、西表にも冬が近づいてきた。
北風が吹くと、気温が下がり海も荒れる。
南国と言えども、さすがにこの時期は海へ出る機会も減ってくる。
それでも山があるのが西表。


ジャングルの草木を観察しながら滝を観に行ったり、地形を楽しみながら横断したりと、山遊びもなかなか楽しい。

 

山の恵みの有難さを痛感するのもこの時期だ。

 

 

今となれば、季節を問わず買い物に出かければ食料は手に入るが、昔は山のイノシシが冬の貴重なタンパク源だった。


 

 

狩猟期間が設けられた今日でも、子育て期間を終えた冬の間だけイノシシを獲ることができる。

11月。猪狩りが始まると、島のオジィのテンションも上がってくる。

「肉が20キロある大きなイノシシ獲ったよ。」
「でも計算が合わないだよな。」
「肉は18だろ?獅子は16だろ?」
(2×9=18 4×4=16)
「獅子の肉が20なんだよなぁ。」

という具合に、ダジャレを言って浮かれたオジサンがあっちこっちにいる・・・

 

 

 

それもそのはず。

リュウキュウイノシシは、なかなか獲れる代物ではない。
イノシシ側も生きるのに必死で、人間に捕まると食べられることくらいわかっている。
優れた嗅覚と野生の勘を駆使し、あざ笑うかのように罠をくぐり抜けていく。

イノシシの習性、食べ物、行動、山の地形を知り尽くし、始めて成せる技なのだ。


 

 

父 池田米蔵

そんな、イノシシ猟の達人でもある、親父の狩りを、幼い頃から見てきた。

持ち上げるのも大変なイノシシを、「ひょい」と2頭もかついで、あの山道を下る。

さっきまで、牙を剥いていたイノシシも、あっという間にさばかれ、冷凍庫の中へ。

そんなイノシシをさばく光景に、大半の人が「かわいそう」という。
確かにかわいそうだ。

それでも、人は生きていく為に、動物たちの命を頂いていかなければならない。

 

 


 

 

 

 

池田 卓

我が子のように大切に愛情をもって育ててきた牛が、連れて行かれる辛さ。

その何の罪をない牛たちを、毎日何頭もさばく方々。

 

僕たちが生きていく為に、どれだけの犠牲があるのか?

どれだけの悲しみを経て、目の前の食事があるのか?

 

気付かせてくれたのも、教えてくれたのも、この島だった。

 

 



父 池田 米蔵

 

 

西表にはイノシシの慰霊碑があり、狩猟期間が始まる前に、みんなで周辺の掃除をして、手を合わせる。


深々と祈る親父の姿に、全てが込められていた。

 

親父の背中を追っかけながら、そんな思いをしっかり背負って、今年も山を歩いてみよう。



(池田 卓)


 

(2013.11.6掲載)

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